はじめに

現病歴

ようこそ。本日の患者は カイ W:

カイ W.は67歳男性。4年前に高悪性度前立腺腺がん(Gleason 4+4=8)の診断を受け、初期治療として骨盤リンパ節郭清を伴う根治的前立腺全摘除術を施行され、リンパ節転移は陰性であった。その後、PSAが持続的に検出されたため、前立腺床のみに対して補助放射線治療を受けた(骨盤リンパ節への照射は行われなかった)。診断時のPSAは27.8 ng/mL、血清テストステロンは312 ng/dLであり、CTおよび骨シンチでは転移は認められなかった。初期治療の2年後に生化学的再発を来し、PSAは6.3 ng/mLであったためアンドロゲン遮断療法(ADT)が開始された。1年前にはPSA抑制(3.3 ng/mL)と去勢レベルのテストステロン値(12.10 ng/dL)が得られ、ADTは継続された。

10か月前の定期受診でPSAの再上昇(18.7 ng/mL)が認められ、新たに骨痛が出現した。骨シンチおよびCTで、体幹骨格および四肢骨を含む広範な骨転移が確認され、大腿骨や上腕骨などの長管骨を含む少なくとも4か所以上の転移が認められた。血中循環腫瘍DNAの次世代シーケンス(NGS)により体細胞BRCA2変異が同定され、エンザルタミドとタラゾパリブによる治療が行われた。2か月後、PSAは18.7 ng/mLから4.5 ng/mLに低下した。しかし、5か月後に生化学的進行が認められ(7.8 ng/mL)、続いてドセタキセル化学療法を6サイクル受け、一時的にPSAは1.2 ng/mLで安定した。しかし、その後PSAは横ばいとなり、再び上昇して直近の評価では4.4 ng/mLに達した。

過去2週間で倦怠感の増悪、新たな右股関節痛、末梢神経障害が出現した。神経学的な新症状や体重減少は否定している。

家族歴・社会歴

BRCA関連がんの既往や家族歴はないが、父方の叔父に若年発症の膵がんがあった。

身体診察所見

身体診察では、意識清明で栄養状態良好、バイタルサイン安定、巣症状を示す神経学的異常は認められない。腰椎に軽度の圧痛があり、新たに右股関節に限局した圧痛を認めるが、脊髄圧迫の兆候はない。

システムレビュー

倦怠感、間欠的な腰痛および右股関節痛を訴える。体重減少、血尿、神経学的症状は否定している。

診察

患者に質問する — 質問を選ぶと面談動画が再生されます。

全文記録は下記

記録 · 化学療法に関する彼の経験について尋ねる

医師: こんにちは、カイさん。またお会いできて嬉しいです。化学療法を開始してから、具合はどうですか?

カイ: やあ、先生!なんとかやってるけど、ここ数週間はちょっとキツいんですよ。疲れがひどくって。何もする気力もないときがあるんです。

医師: それはつらいね。その疲労感は一日中続く感じ? それとも時間帯で変わる?

カイ: 今はずっと続いてます。動けないほどじゃないけど、治療始めた頃より明らかにひどいです。

医師: わかりました。痛みはどう? 何か変化はある?

カイ: はい、右の股関節にずーっと気になる痛みがあります。鋭い痛みじゃないけど、深い、ズキズキした感じです。長く座ってると痛いし、夜も気になり始めてます。

医師: それは不快ですね。歩いたり動いたりするのに変化は出てきてる?

カイ: 足を引きずったりはしてないけど、たぶん動きがゆっくりになったかな。痛みを悪化させないようにしてるんです。

医師: わかりました。しびれがでてきたとか、筋力低下、膀胱や腸の問題は何かある?

カイ: 痛みと手のチクチクした感じ、それと疲れがあります。

医師: その情報は助かります。食欲はどうですか?吐き気や変化ありますか?

カイ: そういうのはありません。

医師: そうですか。あと、最近の検査でPSAがまた上がり始めてて、4.4になってるんですよ。この症状と合わせて考えると、治療の効果が薄れてきてる可能性がありますね。体重は減っていませんか?

カイ: 1㎏くらい落ちているかも。よくわからない。大して変わらないと思います。

医師: わかりました。全体像を把握するのに役立ちます。進行状況を確認するために、最新の画像検査と臨床検査をしましょう。でも、どんな結果が出ても、一緒に乗り越えていくよ。まだ強力な治療選択肢はたくさんありますからね。

診察記録: これは今回の診察に先立って行われた受診記録です。学習者に患者の臨床経過を包括的に示し、症状の進行、過去の診断や治療を理解するのに役立ちます。

以前の臨床検査・画像検査: これらは、現在の評価の前に実施された臨床検査結果と画像検査である。これらのデータは学習者にとって重要な診断情報を提供し、疾患の進行を追跡し、過去の所見を振り返り、患者の臨床経過をより理解するのに役立つ。

既存の処方箋: これらは患者に以前処方された薬であり、その一部は現在も継続して服用されている可能性がある。アクティビティの終わりに近づくと、学習者は患者の現在の状態と臨床ニーズに基づいて、これらの進行中の治療を継続するか、調整するか、中止するかを決定する。

臨床検査/画像検査(新規): これらは、学習者が情報に基づいた診断を行うために重要な情報を収集するために積極的に実施する必要がある診断検査と画像検査である。これらの結果は、潜在的な病状を確認または除外し、臨床上の意思決定に役立ちます。

診断: 学習者は以下のリストから正しい診断を選択する必要がある。選択後、対応する臨床ノートが表示され、理解が深まり、さらに詳しい状況がわかります。

薬剤の選択: 学習者は、以下のオプションのリストから最も適切な薬を選択する必要がある。

薬剤以外の処方: 学習者は以下のオプションリストから最も適切な非薬物処方箋を選択する必要がある。これらには臨床検査、画像検査、生活習慣の改善、理学療法、専門医紹介など、患者を効果的に管理するために学習者が考慮すべき追加の臨床介入が含まれる。

検査

適切な検査を選択してください — オーダーの順序も演習の一部です。

前立腺特異膜抗原(PSMA)陽電子放出断層撮影(PET)/CT

従来の画像診断

臨床検査パネル

診断

最も適切な診断を選択してください。

最初の回答はフィードバック表示前に記録されます — 実際に行動する診断を選んでください。

名称操作
続行するには診断を選択してください

既存の診断

名称開始日終了日
局所前立腺がん……
転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)…継続中

治療判断

既存の処方 · 薬剤の選択 · 薬剤以外の処方。

既存の処方箋

リュープロライド

投与量:22.5 mg · 投与経路:皮下投与 · 頻度: 3か月ごと

骨盤内リンパ節郭清を伴う根治的前立腺全摘除術

外科

すでに中止済み

補助放射線治療

投与量:66 Gy

すでに中止済み

エンザルタミド

投与量:160 mg · 投与経路:経口 · 頻度:1日1回

すでに中止済み

タラゾパリブ

投与量:1 mg  投与経路: 経口投与 · 頻度:1日1回

すでに中止済み

ドセタキセル

投与量: 75 mg/m² IV · 頻度: 3週間ごと

すでに中止済み

薬剤の選択

この患者に処方する薬剤を選択してください。最初の選択はフィードバック表示前に記録されます。

名称操作
続行するには薬剤を選択してください

薬剤以外の処方

患者を適切に管理するために追加でオーダーする臨床的介入を選択してください。

臨床検査パネル

その他の処方箋(監視)

PSA

その他の処方箋(監視)

症例レビュー

本症例は、BRCA2変異を有するmCRPC患者の臨床経過を追跡し、分子標的療法を優先する治療経路を明らかにした。エンザルタミドとタラゾパリブ後の生化学的進行および6サイクルのドセタキセル化学療法後、患者はPARP阻害薬タラゾパリブを開始した。当初はPSAの安定化が認められたが、その後の生化学的および症候の進行によりPSMA標的RLTの評価が行われた。

ゲノムプロファイリングと先進的画像検査により、患者はPSMA陽性疾患であり、内臓病変を有さないことが確認された。この時点で複数の治療選択肢が存在したが、本症例は、進行後のPARP阻害薬再投与が不適切である理由、そして分子標的治療にもかかわらず病勢が進行した際にPSMA標的RLTが選択肢となった理由を検討した。

また本症例は、毒性モニタリングの必要性、治療不応の認識、次治療への移行戦略など、PARP阻害薬治療の実臨床での管理面についても考察した。症例報告者が¹⁷⁷Lu-PSMA-617を治療計画に組み込む決定を行ったことは、現行の治療ガイドラインと整合する、バイオマーカー駆動型かつエビデンスに基づくアプローチを反映している 。

臨床の要点

  • ESMOおよびEAUガイドラインは、BRCA変異を有するmCRPC患者に対して、ルカパリブやタラゾパリブといったPARP阻害薬の使用を推奨している 。
  • PARP阻害薬治療中は血球減少が生じる可能性があり、投与量の調整や治療中止が必要となる場合があるため、血液学的モニタリングが必須である 。
  • ESMOおよびEAUガイドラインは、ARPI治療歴を有するPSMA陽性mCRPC患者に対し、¹⁷⁷Lu-PSMA-617を推奨している 。
  • PSMA PET画像検査はRLTの適格性を判断する上で極めて重要であり、mCRPCの病勢進行検出において従来型画像よりも高感度である 。
  • PSAは一般的にモニタリングに用いられるが、PSMA PET/CTは特にPSA動態が不明瞭な症例において進行を検出する追加的な有用性を持ち得る。しかし、その日常的使用については、費用、利用可能性、明確な生存利益の欠如から議論が続いている 。
  • 治療奏効および病勢進行のモニタリングのために PSMA PET スキャンを行うのは、臨床的または生化学的に進行のエビデンスがある場合に限って適切である。PSMA PET-CTは再発疾患の検出において従来型画像検査を上回ることが示されている 。PSMA PETは、PSAが安定している無症候患者における定期的サーベイランスには推奨されない。
  • PSMA PET/CT による治療奏効評価は、PSA 奏効と比べて生存予測に優れており、また mCRPC 患者において PSA 値よりも早期に病勢進行を検出する。これは治療方針に影響を与え、患者転帰を改善し得る 。
  • PSMA PET は治療奏効に関して重要な情報を提供するものの、その結果は慎重に解釈する必要がある。治療直後に撮像された場合、疾患活動性を正確に反映しない可能性があり、またARPIはPSMA発現に影響を及ぼし、偽陽性の原因となることがある。トレーサーの取り込み低下や腫瘍縮小といった所見は、真の奏効ではなく腫瘍の分化度低下を反映している可能性があり、その結果、病勢進行を過小評価してしまうおそれがある 。
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転移性去勢抵抗性前立腺がん — 症例 II · Or.01.25 · カイ W:

専門分野 — ボリス・ハダシック 医師・医学博士(Boris Hadaschik, MD, PhD)、エレナ・カストロ 医師・医学博士(Elena Castro, MD, PhD)、 ローレンス・クロッツ 医師・医学博士(Laurence Klotz, CM, MD, FRCSC)〔※CM=カナダ勲章(Order of Canada)、FRCSC=カナダ王立外科医協会フェロー(Fellow of the Royal College of Surgeons of Canada)〕、ステファノ・ファンティ 医師(Stefano Fanti, MD)、 ヴォルフガング・フェンドラー 医師(Wolfgang Fendler, MD)

支援者 — ノバルティス

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